トランプの勝因は~世界の闘いから
2017年2月1日
トルコの運輸労組TUMTISは、長期闘争を二回続けて闘い抜き、二つの大手国際物流会社と団体協約を締結した。組合員数が数年で5倍増する大快挙だった。しかし、課題もある。組合の指導部はトルコ労働界で「革新陣営」に属するが、新入組合員の大半は保守的で、与党AKP(公正発展党)を支持する。エルドアン大統領を筆頭とする同政権は反動的で、人権・労働組合権の侵害で何度も国際的な批判を受けている。組合員教育や活動家育成を怠れば、築き上げた組織と運動は、内部から切り崩されていくだろう。
ドナルド・トランプ米国大統領の登場という悪夢に直面し、この重たい課題を改めて考えた。「政策ではなく性格で」同氏の人気が組織労働者の間で広がっていたことは、早くから認識されていた。ある大手組合の一般組合員がフェースブックに立ち上げたトランプ応援ページには、一万件の「いいね」が付いた。中西部など製造業が衰退した地域で白人労働者層がトランプ支持に回り、選挙の行方を左右した。
米国でも労働組合の組織率が年々下がっているが、多くの守旧派組合は対応できていない。勤労者にトランプ人気が浸透した遠因だ。組合の政治活動も、集票運動の域を出ているのか。
SEIU(サービス従業員労組)のように、組織化対策で長年奮闘中の組合もある。入念な調査活動を行なってターゲットを厳選し、ヒトもカネも集中的に注ぎ込む「戦略的組織化」キャンペーンを展開している。その方式は、英国やオーストラリアに広まり、国際労働団体も活動に取り入れている。
だが、サンダース候補が社会民主主義路線を掲げて米民主党の予備選挙で大旋風を巻き起こした際、SEIUは「勝ち馬に乗るため」、守旧派組合と共にクリントン候補を選んだ。これに反発した一般組合員の多くは、棄権票を投じたとも言われる。これもトランプの勝因となった。未組織労働者の組織化抜きに米国労働運動の再生はないが、数を増やすだけが組合の役割でない。国際労働運動にも通じる教訓だ。
振り返り、日本はどうか。2016年12月28日付の日本経済新聞は、連合の組合員は「若者を中心に自民党支持が3割近くまで増えている」と報じた。安倍政権はここ数年賃上げに積極的だという評価だ。戦争法を施行し、労働者派遣法を改悪し、憲法改正を目論むその本質は忘却したのか、教育されていないのか。
「人の振り見て我が振り直す」。新しい年にも世界の仲間から学びながら、このことを肝に銘じよう!
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